相続放棄すると遺品整理はしてもよい?形見分けやポイントについて解説
2024.02.28
親や身近な人の死によって、相続問題に悩まされる人は多いはず。
特に、借金や負債といったマイナス相続から逃れるために、相続放棄を考える人もいるのではないでしょうか。
しかし、相続放棄をしたら遺品整理がしづらくなり、相続放棄できなくなるリスクがあるということを知っておかなければなりません。
そこで、今回は相続放棄を考えている人に向けて遺品整理との関係、遺品整理をするポイントについて詳しく解説していきます。
相続放棄のメリット・デメリット
相続放棄とは、相続人が亡くなった人(被相続人)のすべての財産を受け取らないことです。
相続の対象となるのは、土地や建物、貯金、車などがありますが、プラスのものばかりではありません。
たとえば、借金や債務といったマイナスの財産も対象となり、マイナス財産が多くなるケースは相続放棄を考える人も多いのではないでしょうか。
メリット
相続放棄のメリットは、以下の3つ。
・借金などのマイナス財産を相続しなくて済む
・相続に関するトラブルに巻き込まれない
・事業継承する場合、事業に必要な財産を一人に継承するのに便利
相続放棄することで、亡くなった人の借金を返済する義務がなくなります。
ほかにも、相続の内容や方法で相続争いに巻き込まれることも少なくありません。
遺産相続による名義変更の手続きといった、面倒からも離れられるというメリットもあります。
また、相続に伴って事業継承をする場合、一人の相続人に資産や負債を集中させたい場合、ほかの相続人が相続放棄すると円滑に進みます。
ほかの相続人であった人に財産を分けるなら、生前贈与や特定遺贈の方法をおすすめします。
デメリット
では、相続放棄するデメリットについて解説していきます。
・すべての遺産を放棄しなければならない
・相続放棄の撤回はできない
・遺品整理がしづらい
相続放棄をすると、価値のある資産も相続できなくなります。
一度権利を放棄すると撤回や取り消しすることができないため、借金があるという事実で先走らないようにしましょう。
まずは、どのような資産があるのかを確認し、借金を返済できる見込みがあるなら、相続放棄しなくて済むかもしれません。
一部の例外としては、詐欺や脅迫によって相続放棄した場合には放棄を取り消すことも可能です。
また、相続放棄をした場合、遺品整理も慎重にしなければなりません。
その理由については、後ほど詳しく解説します。
相続放棄と遺品整理の関係
相続放棄をする場合、遺品整理をしてはいけません。
安易な判断で遺品を処分してしまうと、「相続を認めたこと」になってしまい、相続放棄できなくなる可能性があるからです。
これは、民法第921条によって定められていることで、相続放棄しようと考えているなら基本的に遺品には手を出さないことが望ましいでしょう。
特に、金銭的価値のあるもの(実家の解体や売却、貴金属などの売却)は注意が必要です。
相続放棄するときの遺品整理のポイント
相続放棄を考えているときの遺品整理ですが、中には故人の形見として持っておきたいものもあるでしょう。
この章では、相続放棄をするときの遺品整理のポイントについて解説します。
形見分けは自己判断してはいけない
まず、形見分けは自己判断で行わないことをおすすめします。
形見分けをする場合、第三者から見て「金銭的な価値があるかどうか」を見極める必要があります。
一般的な金銭的価値のあるものと、金銭的価値のないものの例は以下の通り。
・金銭的価値があるもの:家、土地、貴金属、宝石、絵画、骨董品、家電など
・金銭的価値がないもの:手紙、写真、古着など
資産価値があるものを形見分けした場合、相続を承認したと見られる可能性もあるので注意が必要です。
ほかにも、金銭的価値がなくても、遺品の大部分をもらったり処分する場合も相続放棄できなくなるケースも。
相続放棄をして形見分けしたい場合、自己判断せず弁護士や遺品整理業者に相談することをおすすめします。
遺品を売却して故人の借金を返済しない
故人の借金があるからといって、遺品を売却して債務を返済することも控えましょう。
故人に借金があった場合でも、遺品売却のお金で返済することができません。
同様に、故人の現金や預貯金から返済することも、相続放棄ができなくなるため注意が必要です。
現金や預貯金に手を出さない
相続放棄した後、故人の現金や預貯金には手を出してはいけません。
死亡後には銀行口座は凍結しますが、解約手続きなどもしないほうが良いでしょう。
現金や口座を解約してお金を手にしてしまうと、「単純承認」に該当するため相続放棄できなくなります。
例外として、葬儀費用を故人の預貯金でまかなうことは認められています。
相続放棄しても遺品整理が必要なケース
相続放棄したら遺品整理も不要と思いがちですが、相続放棄をしても遺品整理が必要なケースがあります。
孤独死をした場合
まず、故人が孤独死をした場合、早急に遺品整理や特殊清掃が必要となります。
孤独死のケースでは、遺体の発見が遅れることが多く、遺体の腐敗などから悪臭や害虫など、近隣住民とのトラブルになることも。
そのため、遺品整理や特殊清掃といった対応をなるべく早く手配する必要があるのです。
賃貸物件に住んでいた場合
個人が賃貸物件に住んでいた場合、相続人となる人が「連帯保証人」となっていたら賃貸の遺品整理や特殊清掃の義務が生じます。
具体的には、賃貸物件の明け渡しの条件となる遺品整理や部屋の修繕費用などは連帯保証人が負担することになります。
財産の管理義務が生じる場合
相続放棄をしても、ほかの相続人や財産相続管理人が選ばれなければ、財産の管理義務は残ってしまいます。
相続放棄をする場合、次の財産管理人が決定するまでは財産の管理を行う必要があることを覚えておきましょう。
相続人がいない場合は相続財産管理人に依頼する
相続放棄してもほかの相続人が選べない場合、「相続財産管理人」を立てて遺品を管理してもらうことができます。
相続財産管理人とは、相続人がいない場合や明らかでないケースに、相続財産の管理をする人のことです。
相続財産管理人を選任すれば、遺品の管理義務がなくなるのが大きなメリットです。
相続管理人は、家庭裁判所によって選ばれ、故人との関係性が考慮されます。
たとえば、親族以外でも特別に仲良くしていた友人、介護を献身的に行っていた人が対象となることもあります。
相続人に代わって遺品を管理してもらうために、必要な経費や報酬として20~100万円ほどを収めることが一般的です。
相続財産管理人の選任によって遺品の管理義務からは解放されますが、任せる以上、相応の報酬が必要になることは理解しておきましょう。
まとめ
今回は、遺品整理と相続放棄の関係について解説しました。
相続放棄をすることで、借金といったマイナス相続はしなくて済みますが、遺品整理が難しくなるということは理解しておきましょう。
中には、故人の思い出として残しておきたいものがあるのも事実。
しかし、安易に手をだしてしまうと相続放棄が出来なくなる可能性もあります。
もし判断に迷うことがあれば、遺品整理業者に依頼することをおすすめします。